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タイポグラフィを学ぶ

第2回:ローマン体を知る

著者:米倉 明男
公開日:2008/12/08

ローマン体について

 私たちデザイナーの多くは、コンピューターを使ってデザインし、印刷物やデジタルメディアなどに落としこんでいきます。そしてデザイン作業の中で、使い分けている書体は、当然デジタルフォントになります。

 このデジタルフォントの規格そのものは、コンピューターの普及にともなって作られたものですが、書体のデザインは、15世紀に発明され20世紀後半まで主流だった活版印刷用に作られた金属活字書体が多くを占めています。

 そして意外に知られていないのが、私たちが普段使っている書体は、近年作られたオリジナル書体よりも、過去の書物を元に、複写から復刻された書体が多いということです。

 特に、今回紹介するローマン体と呼ばれる種類の書体は、ヨーロッパで印刷技術が広まった15世紀末から、その後、スタイルが変化していった18世紀中ごろまでの古典書体が多くを占めています。

 書体設計を行うタイプデザイナーたちは、ゼロからオリジナルを求めるよりも、過去の優れた書物の活字を復刻し、時代性に合わせて改刻を行ってきたのです。そして現代でもそれらの洗練された書体は多くのデザイナーに使われています。

 ローマン体とは、活字のストロークの端にひげのような形状がつく活字書体を指します。このひげの部分は「セリフ」と呼ばれることから、別名セリフ体とも言います。

 ローマン体は時代順にそって、大きく次の4つに分類されます。

1.ヴェネチアン・ローマン
2.オールド・ローマン
3.トランジショナル・ローマン
4.モダン・ローマン

 それでは、これらのローマン体の分類をそれぞれの歴史的背景と合わせて、現代使われている主な代表書体とともに紹介していきます。

ヴェネチアン・ローマン

 ヴェネチアン・ローマンとは、15世紀後半にイタリアのヴェネチアを中心に生まれた書体です。当時のイタリアはルネサンス期で、その文化を強く反映しています。

 それ以前の書物は、宗教色の強いブラックレターが主流だったのに対して、ルネサンスの中心となる人文主義者(ヒューマニスト)と呼ばれる文化人たちは、キリスト教の権威からの解放を目的として使用した活字書体がヴェネチアン・ローマンのルーツとされています。

 ヴェネチアン・ローマンを代表するのは、印刷至上最も美しい組み版と言われるニコラ・ジェンソン(1420-1481)の活字書体(http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Jenson_1475_venice_laertius.png)です。

 ニコラ・ジェンソンの活字はセリフの太さや、ストロークに手書きのペンの風合いがあるものの、それ以前のブラックレターで組まれた書物と比較して、活字前後の余白やカウンタースペースを広く取っているため、濃度は明るく判別性に優れています。

 前回(http://thinkit.jp/article/706/1/)解説した文字組のステムをそろえていく手法は、このニコラ・ジェンソンの組み版にも使われています。おそらく、「白」と「黒」の濃度を見て、文章の可読性を高めた最初の組み版と言えるのではないでしょうか。

 このヴェネチアン・ローマン体は、20世紀初頭から注目されだしたため、現在広く浸透しているものは、ニコラ・ジェンソンのローマン体を復刻したものが主流となっています。

 ヴェネチアン・ローマン体で人気の高い活字書体としては、アメリカのブックデザイナー、ブルース・ロジャースが復刻した「Centaur(セントール)」や、Adobe社の主任デザイナー、ロバート・スリムバックの復刻による「Adobe Jenson(アドビ・ジェンソン)」などがあります(図1)。

 ヴェネチアン・ローマン体は、現在のデザインでは伝統や格式を表現するデザインに選ばれているようです。セリフの強さや、ペンによる手書きの風合いを残したストロークは、高級感のあるデザインに十分マッチするでしょう。

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著者プロフィール

米倉 明男

米倉 明男

Webデザイナー 印刷会社、Web制作会社などのデザイナー/ディレクターを経て、2007年からフリーランスとして活動。デジタルハリウッド講師。 http://www.morethanwords.jp

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